戻るべき情景

 

それは夏の盛りの少し前で、台風がそれて雨が降る日。

 

プールの更衣室を思い出す、雨に煙る湿った大気。

 

知らない街の遅い朝。

 

遠くの空に吸い込まれる煙草の煙。

 

彼女は僕の少し後ろに座っていた。

 

彼女の茶色のサンダルも、声も、僕のTシャツも、僕らをとりまく大気や物事も。

 

なにもかもみずみずしく透きとおっていた。

 

絶対にもどらない時間。