古いけれど新しい夢

 

そこはたぶんアジアのどこかの大きなホテル。

 

僕は夜の会食を待って、バンケットルームを探すともなくホテルの中をうろついていた。

 

おおきな建物だ。どこまでがホテルで、どこからが夜の街なのかわからない。

 

雑貨屋で足を止めた僕は妻(たぶん妻だろう)へのお土産のために、実に様々なものを買いこむ。というか実際には買い込もうと抱え込む。

 

だけど、レジに立ってもなかなか順番がまわってこない。

しまいにはレジが解散してしまった。

 

僕は途方に暮れ、小さなほうのレジの正面の壁にへたり込んだ。

そこでは雑貨の実演のようなものをやっていて、子猫が走り出てきた。

その小さな人だかりの中から、店の副支配人のようなやや背の高い男がでてきて僕にお菓子とお茶を振る舞った。お菓子は日本の和菓子のようなもので餅が使われていた。

 

彼は僕に行った。レジで支払いを済ませたいのならもっと自己主張しなくちゃね。

 

僕はそれまでもレジの列にきちんと並んで、その時はちゃんと自分の番が来たのだと主張した。だけど僕の番が回ってきたとたんに、レジ打ちの店員は、そそくさとさも自分はもっと大事な仕事があるのだ、とでもいうように雑貨の包装 - 多分それは観葉植物だったと思う - を始めたのだ。

 

僕は意を決してその小さなレジに並ぶために、もう一度しなものを抱え込んだ。そこには、さっきレジ打ちの店員が大事そうに包装していたような観葉植物も含まれていた。

 

彼は - さっきの彼だ - あっと言う間に僕の品物の決済をすませてくれた。そこで僕ははたと気が付いた。ここは外国なのだ。観葉植物を買っても日本に持ち込めない。

(いや、僕は日本にかえるんだったっけな?)

 

しょざいなさげにしていた僕は、ふと夕食の待ち時間(それは決まっていなかった)が気になり出し、携帯電話のショートメールのアプリを立ち上げた。

 

そこにはいくつかの事務的な連絡が入っていた。夕食の時間だ。だけど僕は約束をしていた人たちとはなかなか会えなかった。

 

ひとしきり飲んで食べて、(車を運転できない程度に)酔った僕は、車を停めさせてもらっていた馴染みの自動車販売店に歩いてもどった。

 

そこには彼女がいた。

 

以前よりも髪をあかるい茶色(黄金と言っても良いほどだ)に染めたかブリーチした彼女は、僕が後ろを往ったり来たりしてもまったく振り向かないでいた。

 

彼女は僕がそこにいることを知っている。知っている。

 

僕はなにか用事でもあるかのようにそこらを歩き、母屋とは別のたてものになっているトイレに行ったりしたが、彼女は最後まで僕の方を見なかった。

 

しかたなく僕は、停めてある自分の車のそばまで行って、車を運転できないほど酔っていることを思い出した。いや、知っていたけれど車を一目見たかっただけなのかもしれない。そこにはあのときの車があった。トヨタのおおきなスポーティGTだ。きれいだった。細部まであのころのままだった。

 

僕はあきらめて、駅(それはたぶん駅だろう)に向けて歩き出した。

 

ここはどこなんだろう。

 

通りを抜ける。近道を通る。そこは知らない人が生活している通りだ。少し貧しい人たちの。

 

僕は誰かのあとをついていく。民家の縁側のようなところを通る。年配の夫婦がモノを散らかしてその縁側で眠っているそばをとおり、時には彼らを跨ぎ、一段上り、一段さがり、僕は歩いてゆく。

 

どこへ行く。