クルマ原風景その1(おふくろのミニカ)

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母校の裏門にバックでぶつかって後部が大破した輝かしい経歴を持つ一台。自分の車を買うためにガソリンスタンドのバイトで貯めていた頭金30万がそっくり修理代に消えた。それよりも、部活に精を出していた後輩や先生に「なんだどうした怪我はないか」と心配されて恥ずかしかった事の方が、苦い思い出。

スーパーマーケットよりも遠くに行かないせいで、下取りに出されるまで、ずっと新車並みのコンディションだった。免許取り立ての僕は、長期休暇のたびに乗り回していた。

たしかピアチェピアジェ?というグレードで、白いボディに細いパステル・グリーンのラインがお洒落だった。

トゥイーン、という軽快な音で回るエンジンと変速ショックのちょっと大きめな4速オートマで、僕が乗らせてもらえる車(EP71スターレットソレイユ、ビスタ、ミニカ)の中では、いちばん新しかった。

これに乗っていると、周りのかっこいい車なんて気にならなかった。要は、身の丈にあっていたということ。

あれから色々な車に乗ったけれど、車の性能を手触りとして憶えている数少ない車のひとつ。

自分の車ではなかったけれど、思い出深い一台。20年以上前、おふくろも今より若くて綺麗だった。20年という歳月は、おふくろと僕から、確実にその取り分を取っていったということだ。僕はまだ、おふくろに恩を返す準備さえもできていない。だから、頼むから長生きしてくれよ。

僕はあなたにたくさん乗せてもらった。無駄にさせた道のりも長い。生まれ育ったあの町を、あなたを乗せて走りたいんだ。僕が小さい頃に乗せてもらった分だけ。僕は今そこにはいなくて、旅もまだ途中なんだよ。